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最高裁判所第三小法廷 昭和30年(あ)3181号 判決

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人坂上寿夫の上告趣意第一点について。

所論は、刑訴四〇五条所定の事由に当らないので上告の理由とならない。所論立原信一の検察官に対する供述調書に任意性のないことについては、控訴趣意第三点において原審弁護人から主張された趣旨が認められること並びにこの点につき原判決に判断の遺脱があることは、所論のとおりである。しかし、原判決は、猿田為雄、雨沢栄および被告人の各検察官に対する供述調書が不任意の供述を記載したものではなく、第一審判決がこれを証拠に引用したことは違法ではないと判示しており、立原信一の検察官に対する所論供述調書を除くもこれらの証拠によれば本件判示事実の認定はこれを肯認するに難くないから、たとえ立原信一の右供述調書が任意性を欠きこれを証拠としたことが違法であったとしても、その違法は第一審判決に影響を及ぼさないものである(昭和二六年(れ)九五七号同年一〇月一八日第一小法廷判決、昭和二七年(あ)二九〇四号同二八年一〇月一九日第二小法廷決定、昭和二七年(あ)二七一九号同二八年二月一七日第三小法廷決定各参照)から、原審は所論の点の判断如何にかかわらず控訴趣意第三点を理由がないものとして排斥すべきものである。それ故、原審の判断遺脱は、刑訴四一一条一号の事由とならない(昭和二六年(あ)二八八三号同二八年三月二〇日第二小法廷判決、昭和二六年(あ)一三九四号同二七年一二月一六日第三小法廷決定各参照)。

同第二点について。

本件金員が共謀者内部において授受されたものであることは、原判決および第一審判決の認定しないところである。それ故、所論判例違反の主張は、前提を欠き理由がない。

また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎 裁判官 垂水克己)

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